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2018.07.06
固定資産税の課税標準(評価額)に関する不服申立方法 弁護士 吉田正毅

 毎年、6月ころになると、土地や家屋の所有者に対して、市町村(東京23区内の場合は東京都)から固定資産税の納税通知書が届きます。
 納税通知書には、土地や家屋の所有者に賦課された固定資産税額及びその納期限が記載されています。特に賦課決定された固定資産税額に疑問等がなければ、納税通知書に記載された納期限までに納税することとなります。
 しかし、固定資産税の課税標準である固定資産の評価額が、自らが認識している時価と乖離しており、高く評価されている場合など、固定資産の評価額に疑問がある場合、固定資産の評価の見直しを求めて、固定資産評価委員会に対して審査の申出をすることができます。納税通知書をよく見ると裏面等に不服申し立ての方法として審査の申出が紹介されています。なお、審査の申出に係る費用は無料です。
 例えば東京都の場合、審査申出書の様式と記載要領をインターネットで公開しているほか、平成30年度の審査の申出ができる期間は、4月2日から9月6日までと公表しています。

 固定資産の評価は、毎年ではなく、3年に1回行われ、評価されたときを基準年度とし、次の年が第2年度、その次の年が第3年度と称されます。基準年度に行われた評価を争う場合、それが固定資産評価基準に従っているかを検討することとなりますが、第2年度、第3年度を争う場合は、地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情があるため、基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格によることが不適当であるか又は当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合でなければならず(地方税法349条2項、3項但書き)、基準年度と比較して主張立証のハードルが上がっています。
 そのため、基準年度の方が、審査の申出が認められる可能性は高いといえます。平成30年度は、基準年度ですので、もし固定資産の時価に疑問があれば、審査の申出を検討するよい機会だと思われます。

 では、固定資産の評価額については、どのように主張立証をして、評価額の見直しを求めていくのでしょうか。その参考となる重要な最高裁判決を紹介します。
 最判平成15年6月26日民集57巻6号723頁は、土地の固定資産税の評価額について、「適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうと解される」とし、「土地、課税台帳等に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば、当該価格の決定は違法となる」としています。
したがって、固定資産の評価額が時価を上回っていると主張立証できれば、時価を上回る固定資産の評価額は違法として見直しがされることとなります。
 最判平成21年6月5日判タ1317号100頁は、「本件各市街化区域農地の前記各価格は、評価基準及び評価要領に従って決定されたものと認められる場合には、それらの定める評価方法によっては本件各市街化区域農地の価格を適切に算定することのできない特別の事情の存しない限り、その適正な時価であると推認するのが相当である」としています。
 したがって、評価基準の定めに従った評価額であっても、価格を適切に算定することにできない特別の事情が存すると主張立証すれば、評価基準による評価額は違法として見直しがされることとなります。
 最判平成25年7月12日民集67巻6号1255頁は、「土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には、同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず、その登録価格の決定は違法となるものというべきである」としています。
 したがって、固定資産の評価額が時価を下回っていても、評価基準による価格を上回っていると主張立証すれば、評価額は違法として見直しがされることとなります。

 固定資産の評価額については、市町村の決定にミスがあることも少なくなく、今年もいくつかミスがあったことが報道されています。固定資産の評価額に疑問を持った場合、一度審査の申出を検討してみることをおすすめします。

文責:弁護士 吉田正毅

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