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ニュースレター

2017.09.18
民法改正(2) 弁護士 金子剛

前回の民法改正に関するニュースレターでは、消滅時効と法定利率を取り上げましたが、今回のコラムでは、特に不動産賃貸借契約に大きな影響が及ぶと考えられている「個人根保証」に関する改正について、ご紹介したいと思います。

1. 個人根保証契約の規制
現行法では、一定の範囲に属する不特定の債務を保証する「根保証契約」のうち、その債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(「貸金等債務」といいます。)が含まれるものに限り、規制が及ぶものとされています(ただし、保証人が法人であるものは除きます。)。具体的な規制の内容は、保証人が負う債務の上限となる「極度額」を定めなければ、貸金等債務の根保証契約の効力は生じないものとされていました(民法第465条の2)。この趣旨は、根保証契約の場合には、保証人が無制限に責任を負う危険性があることから、極度額を定めることにより、保証人を保護していました。
しかし、実際に、個人根保証契約が利用されるのは、貸金等債務の根保証のみでなく、例えば、借家などの不動産賃貸借契約書においても、「保証人は、賃貸借契約から生じる借主の債務を負担する」というような規定が設けられ、上限額のない根保証契約が利用されています。
賃貸借契約においても、借主が長期に賃料を滞納していた場合や、借主の過失により賃借物を毀損するなどの損害を発生させてしまった場合などには、保証人が予測しえなかった過大な責任を負うことにもなりかねません。そこで、改正法は、貸金等債務の根保証契約に限らず、個人根保証契約一般に対して規制を及ぼし、「個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じない」との規制がされることとなりました(改正法第465条の2)。この改正によって、建物賃貸借契約等においても、個人の保証人による根保証契約の条項を定める場合には、極度額を定めておく必要が生じます。

2. 元本の確定
個人根保証契約においては、一定の事由の発生により元本が確定することによって、保証の対象が確定します。そして、元本が確定した後は、確定した元本と、これに対する利息及び損害金についてのみ、保証人は保証の責任を負うこととなります。
改正法では、貸金等根保証契約以外の個人根保証契約につき、以下の事由を、主たる債務の元本確定事由として定めます(改正法第465条の4第1項)。
 (1) 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき(ただし、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。)。
 (2) 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
 (3) 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
さらに、貸金等根保証契約においては、上記の元本確定事由に加え、以下の場合にも、元本が確定することとなります(改正法第465条の4第2項)。
 (1) 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払いを目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき(ただし、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。)。
 (2) 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

以上のとおり、個人根保証契約について、民法の規定が改正されます。冒頭でも述べましたが、これに伴う実務的な影響として、賃貸借契約などにおいて、保証人の規定に留意する必要があります。詳細につきましては、弁護士への法律相談等をご利用ください。

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