平成28年11月15日、日本弁護士連合会は、最高裁判所、厚生労働大臣及び法務大臣に対し、「養育費・婚姻費用の簡易査定方式・簡易算定表」について提言しました。これは、平成24年3月15日の「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表に対する意見書」を具体化したものと思われます。
同意見書は、現在の算定表について、①公租公課の算出における不合理性、②職業費の算出における不合理性、③生活費指数の不合理性などの問題点を指摘していましたが、大きな問題点は、養育費等を受け取る権利者にとっても、養育費等を支払う義務者にとっても、算定された金額では生活が困窮する事案が出てしまうことだと思います。権利者にとっては、算定金額が低いために生活が困窮し、事案によっては離婚を契機に子どもの就学を断念することもありえます。他方で、義務者にとっても、収入によっては、自身の生活でいっぱいいっぱいで、養育費を支払い続けることが経済的に困難な場合もあります。
こうした問題点は、実務運用上考慮されていますが、現算定表を基準にすることが多いので、解決できずに算定額が決められていることもあります。今回の提言では、権利者にとっては、現算定表よりも1.5倍程度増額されており、十分ではないにしても、離婚による貧困化を防ぐことが期待されます。他方で、義務者にとっても、生活費が最低生活費に満たない可能性を示すラインを設けており、より実態に即した算定になると思われます。
この提言が家庭裁判所等に採用されるかはわかりませんが、今後の運用に影響を与えるのは間違いないと思われます。
日本弁護士連合会ホームページ
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2016/161115_3.html
文責 弁護士 浴田泰充