今年の通常国会において、共謀罪や政治問題などが大きく取り上げられましたが、5月26日に、国民の経済生活に大きくかかわる民法の一部を改正する法律等も成立しました。施行はまだ先ですが、今回は抜本的な改正となっておりますので、施行日までに改正内容を十分に把握しておく必要があると思います。
そこで、今回は、民法改正のうち消滅時効期間と法定利率を取り上げたいと思います。
1 消滅時効期間
(1)消滅時効については、社会経済的情勢の変化に鑑み、主に、以下のように改正となりました。
①現民法170条から第174条に定められている短期消滅時効は削除され、消滅時効期間が統一化されました。
②債権一般(改正第166条1項)
ア)権利を行使することができる時から、10年
イ)権利を行使することができることを知った時から、5年
③②の例外として、生命・身体の侵害による損害賠償請求権(改正第167条)
ア)権利を行使することができる時から、20年
イ)権利を行使することができることを知った時から、5年
となりました。
(2)上記のとおり、消滅時効期間は従来の10年と権利行使可能であることを知ったときから5年の二元的構成となり、
いずれか早い方の期間が満了したきに消滅時効が完成することになりました。
また、消滅時効期間の短期化されたことにともない、商事消滅時効(商法522条)はなくなりましたので、
従来は、商人に該当すれば5年の時効期間が、それ以外は10年の時効期間が適用されていましたが、
改正法では、そのような区別はなくなり、上記の時効期間が適用されることになりました。
2 法定利率
(1)利息については、改正民法404条は、
1項:利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、
その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2項:法定利率は、年3パーセントとする。
3項:前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、
次項の規定により変動するものとする。
4項、5項:省略
となりました。
(2)今回の改正で、法定利率は年5%から年3%となり、3年ごとに、民法改正をせずに変動することになりました。
変動制となったことから、適用利率を見定めるために、利率や利息発生時点を確認する必要があると思われます。
(3)また、遅延損害金については、改正民法419条1項本文は、
「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、
債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める」と定めており、
改正前と同様に、利息としての法 定利率と同じ利率となりました。
そのほかにも、危険負担、瑕疵担保責任や個人保証などの大きな改正がありますので、
今後も掲載していきたいと思います。
以上