(事案の概要)
遺言者であるAは、罫線が印刷された1枚の用紙に、遺産の大半を特定の相続人に相続させる内容の遺言書を作成しました。
しかし、その後に発見された遺言書には、その文面全体の左上から右下にかけて、赤色のボールペンで1本の斜線が引かれていたのです。この斜線は、Aが故意に引いたものであることが分かりました。
そこで、Aが遺言を「破棄」したといえ、当該遺言書が無効になるのではないかが問題となりました。
(裁判所の判断)
「赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるから」「故意に遺言書を破棄したときに該当するというべきであり、これによりAは本件遺言を撤回したものとみなされる」。
したがって、「本件遺言は、効力を有しない」。