ひとくちに「裁判」といっても、「民事訴訟」や「刑事訴訟」、さらには行政庁の行政処分の効力を争う「行政訴訟」や婚姻や親子関係等に関する身分関係を判断する「人事訴訟」などもあり、それぞれ手続も異なります。
まずは、社会生活を営むにおいて、誰でも当事者になる可能性のある「民事訴訟」について、その概略をご説明したいと思います。
1. 民事訴訟のはじまり
(1) 訴状の提出
訴えを提起しようとする人(この人を「原告」と呼びます。)が、「訴状」という書面を、裁判所に提出することによって、民事訴訟が始まります。
訴状には、当事者の氏名や住所など形式的な事項のほか、「請求の趣旨」「請求の原因」「請求を理由づける事実」などを記載します。また、訴状の提出時に、訴状に収入印紙を貼って、手数料を納めます。
(2) 提出された訴状は?
裁判所による訴状の審査を経たうえで、裁判所から、訴えの相手方とされた人(この人を「被告」と呼びます。)に、訴状の副本が送達されます。訴状副本の送達は、通常は郵便による交付送達によって行われます。また、訴状副本の送達とともに、被告に対して、第1回口頭弁論期日の呼出しが行われます。
(3) 訴状を受け取った被告はどうすればよい?
訴状を受け取った被告は、「答弁書」という書面を、裁判所に提出するとともに、相手方に直送します。答弁書には、請求の趣旨に対する答弁や、訴状に記載された事実に対する認否や抗弁事実などを記載します。
2. 口頭弁論の実施
当事者は、訴状、答弁書、準備書面に記載された事項を陳述します。なお、第1回口頭弁論期日に限って、当事者の一方が欠席したときであっても、事前に提出していた訴状、答弁書その他の準備書面を陳述したものとみなすことができます。
当事者間に争いがある事実は、原則として、証拠によって証明していくことになります。
口頭弁論期日においては、書証の取調べや証人尋問などの証拠調べも行われます。
3. 訴訟の終了
訴訟の終わり方には、大きく分けて、(1) 当事者が訴訟を終わらせる場合と、(2) 裁判所の判決によるものがあります。
(1) 当事者が訴訟を終わらせる方法にはどのようなものがありますか?
・原告による「訴えの取下げ」「請求の放棄」、
・被告による「請求の認諾」、
・両当事者の合意に基づく「訴訟上の和解」
によって、訴訟は終了します。
(2) 裁判所の判決
法廷で、裁判長が主文を朗読して、判決の言渡しが行われます。
裁判所から言い渡された判決が、当事者から控訴期間内に控訴を申し立てられずに、確定したとき、訴訟は終了します。控訴期間は、当事者が判決書の送達を受けた日から二週間と定められています。
※ 今回は民事訴訟をイメージしていただくため、一般的な裁判の流れをご説明いたしましたが、民事訴訟を規律する民事訴訟法や関連法令には、ご説明した以外の多様な制度や手続が規定されています。また、個々の案件によって、手続の流れも異なってきます。ご依頼いただきました案件やご相談をお受けした案件につきましては、事案に即した裁判の流れをご説明しておりますので、お気軽にご相談ください。